手の痺れ。産後に起こる症例の1つ②

抱っこによって起こりえる症状

日々、あやしたり、寝かしつけたりで赤ちゃんを抱っこするお母さんは様々な身体的ストレスを抱え込みます。
今回、来院された方は産後2か月で初めてのお子さんとのことでした。

岸和田まちの

主訴・本日の状態

左手の中指と薬指がときどき痺れる。
左肩が子供を抱っこするとつるみたいに痛い。
腰がなにもしてなくても怠い。
頭痛も時々する。
雨が降る前に多い。
成長期側弯と以前に言われた。

既往歴:婦人科疾患。

年齢:30歳代前半。
岸和田在住。
仕事は元々は立ち仕事だったが、その後にデスクワークに。
現在は産休中。

原因

子供の抱っこや腕枕は左上肢を使うことが多いようで頸や肩に負担をかけている。
左肩に痛みがあり、また手を身体の後ろに回して下着を止める際に痺れが出ることもたまにあるとのことで、神経の圧迫を疑う。
手の痺れに対し、子供の体重を支えるのに手首に負担がかかりやすい。
抱っこの際は、身体を反るようにして支えるために腰に負担がかかりやすい。
また、成長期に起きた側弯により脊椎の生理的彎曲が保たれていないと思われる。

施術者の見解・治療内容

姿勢分析では反り腰で身体は後ろ重心になっている。
肩の痛みを訴え、痺れもあるので頚椎症性神経根症胸郭出口症候群を疑い、鑑別診断をしていく。
頚椎症性神経根症の鑑別テストであるSpurling テスト、ジャクソン テストは陰性だった。
よって頚椎症性神経根症は除外とした。
胸郭出口症候群の鑑別テストであるモーリーテスト、ルーステストでは陽性の反応が見て取れた。
胸郭出口症候群を疑う。

胸郭出口症候群
斜角筋症候群、頸肋症候群、肋鎖症候群、過外転症候群の総称。
腕神経叢と鎖骨下動脈・鎖骨下静脈が胸郭出口領域を通過するときに3つの狭い間隙を通り、その狭窄部で何かしらの原因で圧迫された時に症状がでる。
神経症状や血行障害による上肢に疼痛やしびれ感・冷感などをもたらす。
肩こりや上肢への放散痛などから頚椎症との鑑別が必要である。

左手の第3指と第4指に痺れがときどき出るとのことで、子供を抱っこする際に手首に負担がかかっているの可能性を考えて、手根管症候群の鑑別を行う。

手根管症候群
手根骨の隆起(内側は豆状骨と有鈎骨鈎、外側は舟状骨結節と大菱形骨結節からなる)の間にできる溝(手根溝という)を覆う屈筋支帯でできる隙間を手根管といい、その中を前腕の屈筋群の腱と正中神経が通っている。
この部において正中神経が何らかの原因で圧迫されることで発生する病状を手根管症候群という。症状としては、第1指から第4指撓側半分のしびれ感があり、早朝に強く、手を振ることで軽減する。
疼痛は手関節、手指にみられ、母指球は委縮し、筋力低下が起こり、ボタンかけやつまみ動作が不自由になり、チネル徴候(手根管部を軽く叩くと指先に放散するしびれ感)、ファーレン徴候(手関節を曲げるとしびれ感が増悪する)は陽性となる。

ファーレンテストを行い、早期に反応が出たので手根管症候群も陽性だった。
また、雨の日に頭痛を起こすことが多いとのことで自律神経の亢進、もしくは三叉神経の亢進も視野にいれて治療する。

施術では腰の怠さを考えて、足底から順に殿部まで弛緩していく。
これは子供を抱っこすることにより反り腰姿勢になって血行が障害されて血流が阻害されているものを改善するために行った。
また、下腿や殿部の筋力低下も触知できたので、静脈の弁が機能的に血流を身体に循環していないものと推察した。
反り腰姿勢になりやすい方は概ね殿部の筋力低下に加えて股関節の柔軟性が低下が原因となるので、股関節のストレッチを施していく。
肩回り、とくに棘上筋、小円筋、大胸筋を緩めていき、肩甲骨剥がしで肩甲骨の可動域を出していき、菱形筋も伸展させていく。
手根管を拡大するイメージで手掌を把持して手首の正中線上を圧迫しながら伸展し、牽引をかけていく。
カイロベッドで、骨盤の歪みの矯正と開いた骨盤を閉じる矯正に胸椎の矯正をしてからフリクションで腰部をしっかりと伸ばしながら背のばしをしていく。
胸郭出口症候群により、狭窄した部位に対して超音波療法をしていく。
今回は斜角筋隙と鎖骨と第1肋骨の間を照射した。
これでいったん治療を終えて、次回時にどれだけの効果があって、どれだけの時間で痛みが戻ったかを確認する。

治療計画

基本は今回に施した治療を繰り返すが、それに肩回りは吸玉治療を足していく。
また、常に子供の抱っこや世話により前傾姿勢を取ることで肩や腰に負担をかけるので患者さんが自身で簡単にできるストレッチ法を指導する。

治療2~5回目

2回目の来院で腰痛は改善し、左上肢の痺れはだいぶ軽減されていることを確認した。
そこで前回の治療法を踏襲すると共に吸玉治療を肩回りに追加していった。
そこまでの瘀血おけつはなくピンク色をしていたが、盛り上がりは確認できた。
これは皮膚の下の組織液の滲出しんしゅつで、体内の痰、飲、水、湿などの病理産物などの水分が負荷的存在となって皮下組織を通過し、皮膚に進出して停滞してこのような缶象を形成します。
また、帰る前に菱形筋と大胸筋をストレッチする方法を教えて、就寝前に30秒づつするように指導した。

3回目の来院時には左上肢の痛みや痺れは改善していたが、右上肢に同様の症状が出るとのことだった。
指の痺れまではないとのことで、胸郭出口症候群のテストをいくつかして陽性反応が出た。
母親とは無償の愛を注ぎながら自分は身体を酷使するんだなと感心しながら、右上肢を中心に左上肢にしたように治療を施した。

4回目では改善しているがまだ少し痛いとのことで、続けて同様の治療を施していく。

5回目。
患者さんから電話があり、予約日ではないが診てほしいとのこと。
「どうしましたか?」
との問いに、
「夜、寝ているときと朝方に右肩がすごく痛くなって、次の治療日まで我慢できないんです。」
ということだった。
予約時間を告げて来院し、問診をして痛みがある箇所を指さしてもらうと上腕骨の結節間溝部だった。
疼痛が出る動作をしてもらうと肩関節の外転・外旋運動で痛みが増悪した。
上腕二頭筋長頭腱炎や腱板損傷を疑う症状だった。
腱板損傷のテストでは陰性だったが、上腕二頭筋長頭腱炎のテストでは陽性だった。

上腕二頭筋長頭腱炎
上腕二頭筋は烏口突起に起始する短頭と関節上結節に起始する長頭からなり、橈骨粗面に停止する。
上腕二頭筋長頭腱は、上腕の結節間溝のトンネルを通り、結節間溝内で水平方向から垂直方向へと方向を変えるといる解剖学的特徴により結節間溝で機械的刺激を受けて摩耗しやしい構造となっていて、腱炎や腱鞘炎、ときには断裂が発生する。発生機序として
①肩関節の外転・外旋運動を仕事やスポーツで繰り返すことにより小結節との摩耗による変性が進み発生する。
②重量物の挙上によって上腕二頭筋が腱の張力を超えて収縮したときに発生する。
③緊張した上腕二頭筋に対して突然の強い伸張力が加わった際に発生する。症状としては、腱炎や腱鞘炎の場合、結節間溝部に圧痛を認めることが多い。
著明な可動域制限はないが、疼痛増強動作で放散痛を認める。

治療では上腕二頭筋の筋腹と停止部を中心に弛緩していき、吸玉治療を肩回りはもちろん、前腕にある停止部と内側に抜缶し、10分間の留缶をする。
また、超音波療法も同部に併用した。

同じような症状でお悩みの方は是非、

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(参考文献:柔道整復学・理論編 改訂第5版、解剖学 改訂第2版)



(2019年11月22日)



 

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